科学哲学者のカール・ポパーは、反証可能性を持つかどうかを「真の科学」であるかどうかを見分ける基準として提唱しており、それ故彼は精神分析学は科学ではなくて疑似科学に過ぎないと断じた。
精神分析学はしばしばこの哲学に基づく批判を浴びることがあるが、精神分析学の方ではポパーの科学哲学に興味を払っておらず、患者の発言内容や表情から治療者の受ける印象のような主観的情報を数値データのような客観的データに置き換えることは基本的に意味がないとしており、その全体性や対象との関係性などを用いて理論を構築している為、ポパーの科学哲学から見て満足の得られる理論ではない。
その主張として例えば、もしあなたが恋人との関係性を科学的にデータ化し、置き換えたとしたら、それは恋人そのもので、再現可能だろうか?そのような問いかけそのものがナンセンスである。簡単な例で分かるように恋人との関係は科学ではないし、精神分析も科学ではない。
ただしこれはポパーの哲学の歪曲である。ポパーのいう科学理論とは検証において白黒・可否のつく理論である。その意味では例えば特定の恋人の関係の理論(例:浮気の有無)が明確に検証(例:第三者との性交)できるのであればポパー的には科学である。ポパーら科学哲学および自然科学者が問題にしているのは、データを数値化できるかどうかではなく、精神分析の理論が正しいかどうかを検証できるのか、検証できないならなぜそれが正しいと言えるのか。さらに医学的にもっと重要なのは精神病が明確に治療されたとの確定は存在するのか。もっとも、いかに反証可能性が科学にとって重要な特徴であるとは言え、科学と疑似科学の差位は段階的なものである為、近代の科学哲学者の多くは科学と非科学を絶対的に線引きする事は不可能だと考えており、例えばデュエムやクワインは「ある仮説を反証する決定的な実験などはそもそも存在しない」と主張している(デュエム-クワイン・テーゼ)。ただし、ポパーはこのテーゼに対する再反論も行なっている。
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催眠などを用いた回復記憶セラピー(2000年頃までに停止)により、偽りの性的虐待の記憶(虚偽記憶/false memory)を植え付けられ、家族関係が崩壊し、それに加えて甚大な精神的苦痛を受けたとして、多くのセラピストやカウンセラーが訴えられ敗訴した。
しかし、これは正確には、精神分析への批判というよりも、フロイトの初期の理論を援用したある種の心理療法への批判であった。また、法廷の中と外では、この記憶戦争(Memory War)に対する評価は大きく異なっている